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001 『OPTION B――逆境、レジリエンス、そして喜び』

 

実のところ私は今、プランBの人生を歩んでいる。プランAを思い描いていたけれど、次善の策としてプランBを着々と。いつの日か機が熟したら、いつでもプランAに移れるように準備と心づもりをしながら。
 

シェリル・サンドバーグの『OPTION  B』も似たような話かと思っていたら、

……いや、そんな甘い話ではなかった。


シェリル・サンドバーグが向き合い受け入れた「オプションB」は、思いがけず突然ふりかかってきた、自分ではどうしようもない、悲しい選択肢。

「生きていればだれだって苦難に遭遇する」

この本の冒頭で、読者は、胸を締め付けられるような想いを経験することになるかもしれない。
シェリルの痛みにいっきに引き込まれながら、誰もが自分の、あるいは親しい人の、拭い去れない痛みを思い出すことになるかもしれない。

でも、この本はそのままでは終わらない。

オプションAはもう二度と戻ってこない、その悲しみと苦痛のどん底にいるときに、
では、私たちにいったい何ができるのか? どうすればいいのか?

考えるべきは、「次にどうするか」なのだという。

どうすれば、レジリエンスを――折れない心、回復する力を――高められるのかを考える。
どうすればオプションBを見出だし、受け入れ、全力で生かしていけるのか。

「3つのP」
Personalization(自責化)、Pervasiveness(普遍化)、Permanence(永続化)から脱け出すために、具体的に何ができるのか。

「何も尋ねない友人」
友人たちは当事者と顔を合わせても気持ちを慮ってつらい話題を避けてしまいがちだが、それが当事者を孤独に陥らせることになりかねない。どうすれば、「オープナー」として寄り添えるのか。

語り手はシェリル・サンドバーグだが、悲しみの淵に沈む彼女を友人として支えた心理学者アダム・グラントが共著者となり、様々な研究成果を紹介してくれている。そこにシェリル自身や知人たちの実体験が添えられ、説得力を増している。

こういう話はきっと、知っているだけでも処方箋のように効いてくる。苦しくても悲しくても続いていく毎日のなかで、少しずつでも行動に組み込んでいければ、薬のように効いてくる。

この本はきっと、この先の人生で私を助けてくれる。もちろん、私よりももっとこの本を必要としている人はいるだろうけれど、私も、できることならもっと早く若いころに読んでおきたかった。

  


『OPTION B――逆境、レジリエンス、そして喜び』
シェリル・サンドバーグ著、アダム・グラント著、櫻井祐子訳(日本経済新聞出版社)
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著者シェリル・サンドバーグの前著『LEAN IN――女性、仕事、リーダーへの意欲』にも励まされたクチなので、ずっと気になっていました。2017年末の業界忘年会では、ノンフィクション翻訳者・編集者・エージェントが選ぶ「今年の3冊」にも選ばれていました。編集者さんのご厚意でご恵贈いただいたのを機に、ようやく読了。ありがとうございました。