子どものころは、小説、推理小説、SF、ファンタジー、伝記、図鑑、実用書など手当たりしだいに読み、その世界に浸りきって時間を忘れ、先生や親によく叱られましたが、
大人になるほどに、私の読書はノンフィクションへと傾いていきました。
今もフィクションを読まないわけではないけれど、
「事実は小説よりも奇なり」。
でも、
物語にしなければならない真実もある。
そう思わせてくれる作品に出会うと、震えます。
ここ10年ほどで出会った本のなかにもそんな物語がいくつかあって、思い出すだけでも身震いしますが、
なかでもとくに鮮烈だったのが、
『モンキー・ウォーズ』(あすなろ書房)
大人も楽しめる児童書、という程度の認識で読みはじめ、電撃ショックを受けました。
冒頭、一行目からのスピード感。そして、オブラートに包まれた「物語」から、現実がこぼれ出ているような生々しい感覚。
丁寧なやさしい言葉で綴られ、登場人物――いえ、登場するサルたちも生き生きと動き回っているので、小学生高学年くらいからでも読めそうですが、
でも待って。ぜひ、先に大人が読んでみてください。
繊細なお子さんなら、あまりの現実らしさに泣いてしまうかも。泣いてしまうほどの感受性で受けとめられるお子さんなら、その読書体験は生涯の宝物になるでしょうけれど。
お子さんの性格によっては、血沸き肉躍る楽しい冒険物語として読めてしまうかも……それもまた良し!
そのあたり、ぜひ見極めつつ、一度は出会わせてあげてほしいなと思ってしまう本でした。
物語の概要を大人の言葉で表現するなら、
政治、権力、種族紛争、マスコミ煽動。
人の弱さ、世論の愚かさ。
理想の危うさ、どうしようもない現実。
安定した生活を求め、種族のために戦うサル。
ある日突然、平和な日常を奪われたサル。
権力を得るほどに、自分の弱さに負けそうになるサル。
そんな「現実」にどう立ち向かっていくのか。
サルたちの物語ですが、けっして、よそ事ではありません。
リチャード・カルティ著、久保美代子訳(あすなろ書房)