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005『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』

 

自分の訳書で恐縮ですが、

原書の一読者として、ご紹介します。

 

話題の書 "Weapons of Math Destruction" by Cathy O'Neil 

 

日本語版『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』

キャシー・オニール 著(インターシフト)も出ました。

 

 

Weapons of Math Destructionとは?

直訳すると「数学破壊兵器」という意味です。

 

私たちの生活に浸透しつつある数学破壊兵器とは何か?

私たちは数学破壊兵器から大切な人を守れるのか?

数学破壊兵器を生み出さないためにはどうすればいいのか?

 

   *  *  *

 

私がこの本の翻訳をお引き受けしたとき、決め手となったのは、「はじめに」に書かれていた著者の幼いころのエピソードでした。

 

タイトルだけを読むと、数学、アルゴリズム、ビッグデータ、AIの負の側面を強調し、不安感を煽る内容の本なのかと誤解する人もいるかもしれませんが、彼女がなぜ、この本を書いたのかを丁寧に読んでいけば、そのような誤解は簡単に解けることでしょう。

 

彼女は数学を愛しています。

 

正しい目的のために適正に使用されれば、私たちの強い味方になってくれるはずの数学が、誤った使われ方をし、偏見や不公平を助長し、負の連鎖を生み、人々を不幸している。そんな現実を目の当たりにして、彼女は心から悲しみ憂いているのです。

 

でも、彼女はただ漫然と現状を嘆いて批判しているのではありません。

数学を数学破壊兵器にしてしまわないために、行動を起こし、この本を書いたのです。

 

 

人工知能(AI)やビッグデータの活用は、すでに日本でも始まっています。

 

そのAIは、本当に私たちの役に立っているのか?

数学破壊兵器と化してしまってはいないか?

 

幼いころから数学を愛していた著者の渾身の訴えに、

どうぞ耳を傾けてみてください。

 

<参照情報>

 

■著者の生の声を、TEDの動画で聞くことができます。

https://www.ted.com/talks/cathy_o_neil_the_era_of_blind_faith_in_big_data_must_end?language=ja

 

 

■本の内容については、早くから原書に注目してこられた 植田かもめ さんの記事もご参照ください。

 

ブログ「未翻訳ブックレビュー」:データが正義を殺すとき。'数学'破壊兵器とは

http://kaseinoji.hatenablog.com/entry/cathy-wmd

 

寄稿連載「植田かもめの『いま世界にいる本たち』」:第1回:言いにくいことは機械が言ってくれる?

https://note.mu/tuttlemori/n/ndde6479ba6ac

 

 

■著者キャシー・オニールは、2018年、アルゴリズムの公平性を検証する第三者監査会社「オニール・リスク・コンサルタント&アルゴリズム監査(O’Neil Risk Consulting and Algorithmic Auditing:ORCAA)」を創業。今後の動向が注目されます。

 

MIT Technology Review ニューズライン:AIの偏見を検証する第三者監査会社が始動

https://www.technologyreview.jp/nl/a-new-company-audits-algorithms-to-see-how-biased-they-are

 

ORCAAのWebsite

http://www.oneilrisk.com/

 


『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』

キャシー・オニール(著)、久保尚子(訳)、インターシフト